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    ※判決文
    • H15. 8.29 東京地裁 平成14(ワ)16635 特許権 民事訴訟事件
      以下,判決文より抜粋(文字装飾,改行の挿入等はパテントサロン編集部による)

      第4 当裁判所の判断
      1 争点(1)について
         被告は,被告規程に基づいて支払われた金員が特許法35条4項所定の「相当の対価」に当たる旨主張する(被告の主張1)。
         しかしながら,勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても,これによる対価の額が特許法35条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・裁判所時報1338号5頁参照)。
         したがって,被告の上記主張は,これを直ちに採用することができない。そこで,以下,「相当の対価」の額について検討する。

      2 争点(2)について
      (2) 「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」について
      イ 前記第2の1(5)のとおり,被告は,本件各特許について本件各ライセンス契約を締結し,実施料として,一時金1億1500万円及び平成10年9月から平成14年5月までのランニングロイヤルティ824万8637円の合計1億2324万8637円の支払を受けた。
      エ よって,「使用者等が受けるべき利益の額」は,1億2324万8637円である。

      (3) 「使用者等が貢献した程度」について
      ウ 本件につき被告が貢献した程度については,
        前記2(1)認定の原告の職務内容,
        同(2)認定の本件各発明がされた経緯,
        同(3)認定の本件各発明を権利化するに至る経緯,
        同(4)認定の本件各発明の事業化の経緯,
        同(5)認定の本件各ライセンス契約締結の経緯及び
        同(6)認定の原告に対する給与等の支払状況等の諸事情を総合的に判断して,定められるべきである。(中略)
       以上の諸事情を併せ総合的に考慮すると,被告が本件各発明がされるについて貢献しまた前記利益を受けるについて貢献した程度としては,全体の約90パーセントと認めるのが相当である。

      (4) 「相当の対価」の額
      ア 以上によれば,本件各発明に対する「相当の対価」の額は,被告が受けるべき利益の額1億2324万8637円のうち被告の貢献した程度約90パーセントを控除した残額1232万5000円となる(1000円未満四捨五入)。 
         1億2324万8637円×(1−0.9)≒1232万5000円

      イ 前記第2の1(6)のとおり,原告は,被告から本件各発明に係る特許について,被告規程に基づき合計103万円の報奨金を受領したほか,本件ライセンス契約(1)の締結に関し,原告を月間MVPとして表彰して7000円を支払ったことが認められ,これらはいずれも「相当の対価」の一部の支払に当たるものである。そこで,アの「相当の対価」の額から上記支払済みの金額を控除すると,「相当の対価」の不足額は,1128万8000円となる。
         1232万5000円−103万円−7000円=1128万8000円
    ※対象特許
    • 特許第2130245号
      発明の名称   鉄−希土類−窒素系永久磁石材料の製造方法
      特許請求の範囲
       1 主構成元素としてNを含む永久磁石材料の製造方法であって,予めN含有量が最終組成よりは少ない原材料を作成し,前記原材料を粉砕して粉体を得て,前記粉体をNを含む気体中で処理することによりNを侵入させて最終組成とすることを特徴とする鉄−希土類−窒素系永久磁石材料の製造方法。
       2 永久磁石材料の組成式;
      (Fe1−XRX)1−yNy
      (ただし,RはY,Thおよびすべてのランタノイド元素から成る群の中から選ばれた1種または2種以上の元素,
      0.07≦x≦0.3
      0.001≦y≦0.2
      で表される請求項1に記載の鉄−希土類−窒素系永久磁石材料の製造方法。
       3 Nを含む気体がN2,NH3,またはNH3とH2の混合ガスである請求項1または2に記載の鉄−希土類−窒素系永久磁石材料の製造方法。
    ※関連サイト
  • 日立金属の元従業員が控訴、「相当の対価」の判断は東京高裁に(2003/9/26)
  • 日立金属の元従業員が控訴,「相当の対価」の判断は東京高裁に持ち越し(2003/9/26)(記事の閲覧にはNE Onlineへのユーザ登録が必要)
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  • 特許法(平16年改正)
    (職務発明)
    第35条 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。

    2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。

    3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

    4 契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。

    5 前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第3項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

  • 特許法(改正前)
    (職務発明)
    第35条 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性資上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。

    2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定の条項は、無効とする。

    3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

    4 前項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。