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第4回 Utility Patentによる植物の保護
今回は12月10日にでた米国最高裁判所の判決をご紹介します。
J.E.M. AG Supply, Inc. v. Pioneer Hibred Int'l, Inc.
[この判例のポイント]
植物は、米国特許法161条のPlant Patentsだけではなく、同法101条の下、Utility Patentとして保護され得る。
[事実関係]
Pioneerは、特許でカバーされたHybrid Seed(かけ合わせにより作る種(たね))を、Limited
Label License(その種から穀物を作ることのみを許可するライセンス。再販等を禁止していた)の下で販売していた。
J.E.M AGは、PioneerからLimited Label Licenseの下、特許されたHybrid Seedを購入し、それを再販売していた。そのため、Pioneerは地裁にJ.E.M AGを特許侵害で訴えた。
これに対し、J.E.M AGは、PioneerのHybrid SeedのようなSexually Reproducing Plantは米国特許法101で保護される主題ではないとして、特許無効のCounterclaimをファイルした。
この特許無効の根拠は、米国特許法161条 および、Plant Variety Ptotection
Act (PVPA)は、Plant Lifeを保護する唯一の手段であると解釈され、101条の下では、Utility
PatentでPlant Lifeの保護をできないというものであった(PVPAは植物を保護する法律。下記参照)。
PioneerはSummary Judgmentをファイル。地裁は、Chakrabarty事件における、101条の広い解釈に基づき、101条はPlant Lifeをカバーすると判断し、PioneerのSummary Judgmentを認めた。これに対し、J.E.M AGはCAFCに上告したが、CAFCも地裁の判断を支持、J.E.M AGは最高裁にwrit of certiorariをファイルし、最高裁がこれを取り上げた。
[本件の争点]
Plantsが101条のもと、Utility Patentで保護できるかどうか。
[最高裁の判断]
J.E.M AGは、米国特許法161条(Plant Patents)あるいは農業に関するPlant Variety Ptotection Act(PVPA) はPlant Lifeを保護する唯一の手段であり、Plant Lifeは101条のもとUtility Patentでは保護されない、また、農業に関するPVPAは、101条の保護対象を変更するものであり、植物は101条の保護対象外であると主張。さらに、101条のもとUtility Patentで保護されるとすると、議会の意図に反することとなると主張。J.E.M AGはこれを支持するいくつかの理由をのべた。
しかし、最高裁は、米国特許法101条の文言は、Living Thingを含むとし、さらに、米国特許法161条およびPVPAの条文にも立法過程にも、「同法律が唯一の植物保護の規定でありUtility Patentでの植物の保護を認めない」といった意図は見あたらないので、米国特許法161条およびPVPAが排他的な条文であると言うJ.E.M AGの主張は認められないとし、J.E.M AGの主張を退けた。
また、PVPAについては、先例に基づき米国特許法PVPAによると植物のDual Protectionは可能でありJ.E.M AGの主張は認められないとし、最高裁はCAFCの判断を支持した。
[筆者コメント]
なお、米国特許庁は、今までも、植物についてUtility Patentを発行してきており、この判決がいままでの特許庁のPracticeを変更するものではありません。そのため、ビジネスモデル特許の判決が出たときのような大きなインパクトはないかも知れせん。
米国特許法101条 Inventions patentable
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
米国特許法161条 Patents for plants (1994年改正)
Whoever invents or discovers and asexually reproduces any distinct and new variety of plant, including cultivated sports, mutants, hybrids, and newly found seedlings, other than a tuber propagated plant or a plant found in an uncultivated state, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
The provisions of this title relating to patents for inventions shall apply to patents for plants, except as otherwise provided.
旧米国特許法161条 Patents for plants (PPA) (1930年に立法された時の161条)
Any person who has invented or discovered any new and useful art, machine, manufacture or composition of matter, or any new and useful improvements thereof, or who has invented or discovered and asexually reproduced any distinct and new variety of plant, other than a tuber-propagated plant, not known or used by others in this country, before his invention or discovery thereof, may obtain a patent therefor. Act of May 23, 1930, 1, 46 Stat. 376.
Plant Variety Ptotection Act (PVPA)
It provides plant variety protection for "the breeder of any sexually reproduced or tuber propagated plant variety (other than fungi or bacteria) who has so reproduced the variety." 7 U.S.C. 2402(a).
今泉 俊克(いまいずみ としかつ)
米国特許弁護士。1962年、東京都出身。1985年中央大学理工学部電気工学科卒業後、1985年-1995年(株)リコー法務本部勤務。1995年-1998年駐在員としてRicoh
Corporationに勤務。(ワシントンDC駐在) 1997年米国Patent Agent Exam合格(Limited
Recognition)。2001年 Franklin Pierce Law Center卒業(Juris Doctor取得)。現在、Rader,
Fishman & Grauer PLLC (ワシントンDC)で、主に特許出願手続き、意匠出願手続き、特定分野の判例の調査、法案の調査、判例に基づく米国出願用英文明細書の作成を行っている。2003年2月ワシントンDCの司法試験に合格。趣味:カニ釣り、下手なゴルフti@raderfishman.com
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