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特許戦略ハンドブック
鮫島 正洋 (編著)
中央経済社
戦後、日本は欧米から基本特許を導入し、国内で良くて安い製品を作り、世界に輸出し、奇跡と言われる高度成長をなしとげた。この間、各社は競って改良発明に力を注ぎ、世界最大の特許出願国となった。特許の出願競争は、社内の技術者に対し、発明意欲を刺激し、競争相手とのライセンス契約においても、有利な地位をもたらした。しかし、時代は変わり、欧米も簡単に基本特許を売らなくなり、韓国・中国の追い上げにより、日本企業は厳しい状況に追い込まれている。
日本企業の生きる道は、世界に誇れる基本的な特許を生み出し、技術力で勝つしかない。そのためには、先行技術を調べ、効果的な研究開発をし、強い特許に仕立てあげ、他社に負けない特許ポートフォリオ・マネジメントをする特許戦略が必要である。従来は、企業の特許部・知財部は特許の出願・取得に集中して、経営サイドからは注目されないケースも多かったが、今や、知財部は経営戦略上も重要性を増しており、業種によっては、企業の命運を握る場合も生じている。
本書はこの様な観点から、弁護士・弁理士・公認会計士・コンサルタント・ジャーナリストなど日本を代表する知的財産の第一人者10名が、特許の経営上の位置づけ、特許ポートフォリオ、特許マネジメント、価値評価、技術移転をわかりやすく書いている待望の書である。
編著者の鮫島正洋氏は、工学部出身のエンジニアであり、自ら40件の特許を出願しており、その後、弁理士・弁護士の資格を取得している技術・ビジネス・法律に強いマルチ人間である。小生が特許庁長官の時、特許に関する本と言えば、特許の取り方や特許法の解説がほとんどであり、経営、経済、技術戦略などとの関係が分析されておらず、こういうものを総合的に研究する「パテント・サイエンス」を提唱したが、その際、鮫島氏も同じ考えの持ち主で意気投合したことがある。その後、鮫島氏は着々と幅広い角度から特許に関する研究を進めてこられているが、本書はその成果であり、氏の情熱に心から敬意を表する次第である。
現在、政府は知的財産基本法に基づき、国家戦略として知的財産戦略を進めており、企業にも知財戦略の構築を呼びかけている。その点からも本書はタイムリーだ。本書は、企業の知財関係者はもち論、経営陣、企画、経理関係者にも是非、読んで頂きたい本である。また、大学のTLO活動が本格化しつつあるが、大学関係者にもきわめて有益である。各章の扉の要約、用語解説、見やすい図表など、親切な工夫が本書を読みやすくしている。
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内閣官房 知的財産戦略推進事務局長 荒井寿光 |
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